2008年12月4日木曜日
螺鈿迷宮
オリジナルは、2007年11月30日リリース。
海堂氏はいつも小説というメスで日本医療の患部はどこか、
を白日の下に曝す。
『ジーン・ワルツ』では産婦人科医がなぜ激減したかだけでなく、
明治時代のまま変わらない法律の矛盾や、アンケートばかりとっている厚生労働省の逼迫した現実への無反応・無為無策さ、
名ばかりの少子化対策といったあらゆるものの問題点を全て提示していた。
『ジーン・ワルツ』が人間の『誕生』への問題提起であるとすると、本作は人間の『死』に対する問題提起として書かれている。
そしてこの2つの小説は対となって構想されたのでは、と思える。
デビュー作の『チーム・バチスタ・・・』で既に死者へのMRI検査の重要性を説いているが、
本作では医者とは切っても切れない『死』の問題と、現代医療にとって『死』とはどのような存在なのか、
を読むものに気がつかせる。
そして頭を過ぎるのがマイケル・ムーアの『シッコ』だ。
アメリカ医療の酷さはどことなく今の日本の医療の先の姿のように思えてならなかった。
ここに登場する桜宮病院の院長の言葉、『医学とは屍肉を喰らって生き永らえてきた、クソッタレの学問だ。
お前にはそこから理解を始めてもらいたい。医学の底の底から、な』が、この作品を象徴している。
厚生労働省の考える『死』、病院の受け止める『死』、自殺志願者の『死』、末期癌患者の『死』・・・
どれも同じ『死』であるはずなのにこの作品では違って感じられる。
それは各々の『生』が螺鈿のように様々に光り輝いているからなのかもしれない。
圧倒的な読後感を残す傑作である。
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